houritsu は日本の全法令を「改正法 1 本 = 1 コミット」の git リポジトリにしたものです(作った話)。この記事は、git を使わない人がこれを GitHub の画面だけで読むための手引きです。インストールもログインも要りません。
自分の興味だけで作ったので、誰が使うかは考えていませんでした。でも思ったより見られて、公認会計士の人や元裁判官の方にも見てもらえたようです。そういう人はたぶん git を使わないだろうな、と思ったので、使い方を書いておくほうが助けになると考えました。
画面は 2026-11-05 時点の GitHub のものです。例には個人情報保護法を使います。スクリーンショットは私のアカウントで撮ったので、Settings のタブや編集のボタンが写っていますが、ほかの人の画面には出ません。
まず 1 つ: 改正法 1 本で何が変わったかを見る
一番見てほしいのはこれです。窓の杜で紹介されたときも、ここが一番刺さっていました。
1. 法令のファイルを開く
個人情報保護法は laws/act/415/415AC0000000057.md です。ほかの法令の探し方は後で書きます。
法令のファイル。右上の History を押す
上の表は法令の情報で、その下に条文が続きます。
2. History を押す
この法令に手を入れた改正法が、施行日の新しい順に並びます。
History。日付は施行日、題名は改正法の名前
3. 改正法の名前を押す
ここでは 2026-10-01 の「日本学術会議法 施行」を開きます。上半分がコミットメッセージで、改正法の番号、公布日、施行日、この改正法が書き換えた法令の一覧が書いてあります。
コミットメッセージ。この改正法 1 本で 14 本の法令が書き換わっている
一覧の下にはこう続きます。
Amendment-Law-Id: 507AC0000000070Enforced: 2026-10-01Bill: 閣法 第217回国会 第36号Bill-Submitter: 内閣Bill-Url: https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g21709036.htmBill-Url は衆議院の議案のページで、法律案の理由もそこにあります。
4. 下にスクロールして差分を見る
書き換わった法令ごとに差分が出ます。赤が改正前、緑が改正後です。
国家公務員法から「十二の二 日本学術会議会員」が消えた
日本学術会議が国の機関から法人になったので、その会員は特別職の国家公務員ではなくなった、ということのようです。個人情報保護法の差分を見ると、別表に日本学術会議が 1 行足されていました。
条文の番号がずれると、削除と追加が離れた場所に出ることがあります。そのときは同じ文を探して見比べてください。
コミットの画面の URL はブックマークしたり人に送ったりしないでください。理由は後で書きます。人に教えるときは、法令のファイルか History の URL を送ります。
法令ごとに、何に巻き込まれて変わってきたかを見る
History の一覧そのものも読みものになります。
作って一番驚いたのは、巻き込まれ改正が思ったより多かったことです。改正と呼ぶべきかはしらんけど。個人情報保護法の History には 30 本の改正法が並んでいますが、題名に「個人情報」が入っているのは 8 本だけでした。残りは日本学術会議法や防災庁の整備法のほか、金融商品取引法、民事訴訟法、刑法、デジタル社会形成基本法などの改正に合わせて書き換わったものです。
期間で絞ることもできます。History の右上の「All time」から選ぶか、URL の末尾に ?since=2020-01-01&until=2020-12-31 を付けると、2020 年に施行された改正だけになります。
https://github.com/Kohei-Wada/houritsu/commits/main/laws/act/415/415AC0000000057.md?since=2020-01-01&until=2020-12-31History の各行の右端にある <> のボタン(View code at this point)を押すと、その改正が施行された時点の条文が開きます。過去のある日の条文を読みたいときは、その日より前で一番新しい行の <> を押してください。
まだ施行されていない改正を見る
公布されたけれど、まだ施行されていない改正は upcoming というブランチに入れています。ファイルの画面の左上の main を押して、upcoming に切り替えます。
main を押して upcoming を選ぶ
切り替えてから History を押すと、個人情報保護法には 2027-04-16、2028-07-16、2028-12-23 に施行される改正が並んでいます。施行日がまだ決まっていない改正は、e-Gov にならって 2117-12-31 の日付で一番上に置いています。
行ごとに、最後に変えた改正法を見る
ファイルの画面で「Blame」を押すと、各行の左に、その行を最後に書き換えた改正法が出ます。
Blame。左の列はその行を最後に書き換えた改正法
ただし、文言が生まれた日ではありません。houritsu の履歴は 2015 年ごろからなので、それより前からある文はその法令の一番古いコミットにまとめて入っています。「この日までにはあった」と読んでください。「4 years ago」のような表示はコミットの日付、つまり施行日からの年数です。
任意の 2 つの日付を比べる、条文 1 つを追う
ここからは GitHub の画面ではできません。GitHub にも 2 つの時点を比べる画面はありますが、houritsu では全法令の変更が混ざるので、半年分でも大きすぎて表示されませんでした。
私自身、git のコマンドは AI に打たせているだけです。聞きたいことを聞けばいいと思っています。まずは ChatGPT などにやってもらって、信用できない人は git で機械的に確かめればいいんじゃないでしょうか。
AI に頼む方法は 2 つあります。
- 法令 1 本だけなら、ファイルの画面の「Raw」の横のダウンロードボタンで markdown を保存して渡し、質問します。個人情報保護法は約 10 万字あります。
- Claude Code や Codex のように手元でコマンドを動かせる AI なら、houritsu を clone したフォルダで「個人情報保護法、2020 年から何が変わった?」と聞けます。
Claude Code に後者を頼むと、令和 2 年の改正、令和 3 年のデジタル社会形成整備法、令和 8 年の改正を、施行日つきで挙げました。ただ、令和 8 年の改正の本体はまだ施行されていないのに upcoming ブランチは見ておらず、そこは「わからない」と答えていました。AI の答えは条文と官報で確かめてください。
git で確かめたい人向けに、確かめたコマンドを置いておきます。
git clone --filter=blob:none https://github.com/Kohei-Wada/houritsu.gitcd houritsuf=laws/act/415/415AC0000000057.md
# 2020-01-01 時点と今の差分git diff $(git rev-list -1 --before=2020-01-01 main -- $f) main -- $f
# 第十六条だけの変遷git log -L '/^##* *第十六条/,/^##* *第十七条/:'$f
# 略称から法令を探すgit grep -l '^abbrev: "個人情報保護法"' -- laws法令を探す
ファイル名は e-Gov の法令 ID です。e-Gov 法令検索で法令を開くと、URL の末尾が 415AC0000000057 のような ID になっています。houritsu では laws/<法令の種類>/<ID の先頭 3 文字>/<ID>.md に置いてあり、法律の種類は act です。
GitHub にログインしているなら、リポジトリの検索窓で法令名を探すこともできます。コードの検索はログインしていないと使えません。
コミットの URL が毎日変わる理由
e-Gov は過去の条文をよく書き換えます。houritsu は毎朝 e-Gov から取り込むので、e-Gov が古い時点の条文を直すと、そこから先のコミットを作り直すことになり、コミットの ID(ハッシュ)が変わります。今はそれがほぼ毎日です。
過去の投稿を後から変えるのはどうなんだろうな、と思いました。それは使いづらいわ、という感じです。
houritsu の側では作り直しても条文を書き換えていないことを確かめられるようにしました。書き換えていないことが保証されればいいかなと思ったからです。
確かめるのは houritsu-builder の verify です。e-Gov から今の条文を取り直し、houritsu と同じ変換をかけて、ファイルと 1 バイトずつ比べます。Rust のビルドが要るので、git と同じく AI に頼むのが早いと思います。
git clone https://github.com/Kohei-Wada/houritsu-builder.gitcd houritsu-buildercargo build --release
# clone した houritsu のフォルダでcd ../houritsu../houritsu-builder/target/release/houritsu-builder verify laws/act/415/415AC0000000057.md個人情報保護法で試すと、こう出ました。
OK laws/act/415/415AC0000000057.md--revision に frontmatter の revision_id の形で過去の時点を渡すと、その時点のコミットも確かめられます。2020-12-12 施行の改正の時点も同じく OK でした(末尾はそのときのコミットの ID です)。
$ houritsu-builder verify laws/act/415/415AC0000000057.md --revision 415AC0000000057_20201212_502AC0000000044OK laws/act/415/415AC0000000057.md at 32cc900e69c0食い違うと MISMATCH と理由、短い差分が出ます。
OK が言えるのは「このファイルは、今 e-Gov が出している条文と同じ」というところまでです。e-Gov も正本ではありません。正本は官報です。
気をつけること
- 正本は官報です。houritsu は条文と差分を見せるだけで、解釈や助言はしません。
- 履歴は 2015 年ごろからです。e-Gov の改正データがそのあたりからしかないためです。
- 1970 年より前に施行された改正は、git の都合でコミットの日付が 1970-01-02 になっています。本当の施行日はコミットメッセージの
Enforcedにあります。 - データは CC BY 4.0 で公開しています。MIT は変換プログラム(houritsu-builder)のコードのライセンスです。法令の条文そのものには、著作権法 13 条により著作権がありません。
出典:e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)、PDL1.0。houritsu-builder が markdown に加工して作成。