はじめに
同僚やステークホルダーとの会話で、「あの人にこの言い方は刺さるか、それとも地雷か」を毎回ゼロから考えるのが地味に疲れます。自分一人が頭の中で覚えていられる人数には限界があるし、そもそも忘れます。
これを プロファイルをデータとして管理する形 で解決する Claude Code plugin として supernemawashi を作りました。
Slack / Gmail / Calendar / GitHub から事実を収集し、心理学フレームワークで分類し、状況別の DO / DON’T ルールを生成して、返信を書くときに呼び出す ── という workflow です。処理はすべてローカルで完結し、外部には何も送りません。
なぜ作ったのか
エンジニアの仕事の大半は「人と話す」ことだ、と言うと身も蓋もないですが、実際そうです。コードを書く時間より、誰かに頼む・報告する・揉める・説得する時間のほうが長い。そしてそのすべてに対して「相手のタイプ別の最適な言い方」を毎回考えている。これが疲れる。
具体的にはこんな場面です。
- ある人に「率直すぎる言い方」をして地雷を踏んだ。次から気をつけよう、と思って忘れる
- ある人は「数字で示す」と通るが、別の人は「ストーリーで示す」ほうが通る。逆をやると無視される
- ある人は会議で詰めたほうが動くが、別の人は会議で詰めるとシャットダウンする
これを「経験で覚える」やり方は、相手の人数が増えると破綻します。覚えていない人が相手だと毎回ゼロからやり直しだし、覚えているつもりの人でも忘れていることがある。
どう解決したか
supernemawashi の発想自体は単純です。
- その人についての 事実(誰がいつ何を言ったか)をデータとして記録する
- 事実を 心理学フレームワーク で分類する(防衛機制 / 葛藤モード / エゴ状態 / 動機 / バイアス / 愛着スタイル)
- 分類結果から、状況別の DO / DON’T ルール を生成する
- 返信を書くときに、その人のプロファイル + 該当状況のルールを呼ぶ
つまり「あの人にどう言うか」を 事前計算してファイルに置いておく。返信のたびに考え直さない、という発想です。
プロファイルの保存場所は ~/.local/share/supernemawashi/profiles/<person-name>/ で、すべてローカル。MCP 経由で Slack / Gmail を読みに行くときも、収集したデータが手元から出ることはありません。
Skills 構成
操作系の skill は nemawashi- プレフィックスで動詞先頭に統一しています。
| Skill | やること |
|---|---|
nemawashi-collect | MCP source(Slack / Gmail / Calendar / GitHub)から事実を収集してプロファイルに書く |
nemawashi-analyze | 集めた事実を心理学フレームワークで分類し、状況別 DO / DON’T を生成 |
nemawashi-show | プロファイルの閲覧(一覧 / 一人ドリルダウン / 状況別ルール集約) |
nemawashi-discover | 自分が会話しているのに未プロファイルな人を MCP source から発見 |
nemawashi-check | stale な(古い分析の)プロファイルの dashboard |
nemawashi-note | 1on1 / 電話 / 廊下話など MCP で見えない事実を手動で 1 行追加 |
nemawashi-reply | 状況に合ったフレームワークだけ load して、返信案を 2〜3 通生成 |
nemawashi-migrate | 旧フォーマットのプロファイルを新フォーマットに変換 |
nemawashi-issue | 思いついた改善案を house-style に整形して GitHub issue 化 |
基本的な workflow はこうなります。
[1] /nemawashi-collect "John" ↓ MCP source から事実収集[2] /nemawashi-analyze "John" ↓ フレームワークごとに分類、DO/DON'T 生成[3] /nemawashi-reply "How should I reply to John about the deadline?" ↓ John のプロファイル + 該当フレームワークだけ load[4] 2〜3 通の draft が返るinstall はマーケットプレイス経由です。
/plugin marketplace add Kohei-Wada/supernemawashi/plugin install supernemawashi@supernemawashiClaude Code のセッションを再起動すると、using-supernemawashi という entry point skill が SessionStart hook で注入され、あとは自然言語で動きます。
注意点・ハマりどころ
- 「人をデータ化する」ことの違和感: プロファイルを作る対象は「自分が会話する相手」であって、監視対象ではありません。社内の他人を勝手にプロファイル化する用途には作っていない(MCP source も自分のアカウント経由でしか動かない)
- MCP の rate limit: Slack や Gmail を一気に叩くと制限に当たります。
--all系の一括操作はバッチ 5 並列で間引いています - stale なプロファイル: 1 ヶ月分析していないプロファイルは信頼度が下がる。
nemawashi-checkで staleness を可視化し、nemawashi-update --allで一括再分析できます - 「全員 collect」は重い: collect は MCP 依存で時間がかかる一方、analyze はローカルファイルのみで軽い。なので 2 つの skill を分離して、分析だけ再走できるようにしています
結果
- プロファイルを持っている相手なら、「どう言えばいいか」を考える時間が 5 分 → 30 秒程度に圧縮された
- 「久しぶりに連絡する人」「あまり会話していない人」も、過去の Slack / Gmail から自動で事実が集まるので、初回コストが下がった
- 自分自身のプロファイルを作って自分を analyze にかけたら、自分の coping pattern が可視化されて、ちょっとセラピー的に役立った(副次効果)
まとめ
- 「人とどう話すか」を毎回ゼロから考えるコストは、データ化で削れる
- supernemawashi は、事実収集 / 心理学分析 / 状況別ルール生成 / 返信 draft を 1 つの plugin で繋いだ
- プロファイルデータは手元から出ない。MCP source の読み込みも自分のアカウント経由のみ
- Claude Code plugin として install 可能
リポジトリはこちらです: supernemawashi (GitHub)